2020年最後の記事は、プロレスブロガーとして「#買って良かった2020」をテーマに記事を書きたいと思う。
その買って良かったものとはブログタイトルにもある通り、『リングサイド プロレスから見えるアメリカ文化の真実』(スコット・M・ビークマン、 鳥見真生=訳 早川書房)という一冊の本です。
プロレスというジャンルのみならず、リアリティショーが物議を醸す現代においても、考えさせられる内容となっていました。
現実と非現実の間
世間とプロレス
プロレスファン以外の方からすれば、「プロレスって何が面白いの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
大抵こういう投げかけに対し、プロレス側からのアンサーは「つべこべ考えずありのままを楽しめ!」という言葉が目立ちます。
確かに、物事は説明的になればなるほど詰まらなくなるものです。
そしてまたプロレスという特異なジャンルほど、説明的になればより詰まらなくなってしまうのかも知れません。
「つべこべ考えずありのままを楽しめ!」、それはそれで良いとは思いますが、プロレスに特化したブログを書いている自分としては、客観的な目線も持っていたい気持ちもある。
「やらせ」「八百長」「プロレス的」
僕個人としては、プロレスをこのように表現する方たちに目を背け「そんなくだらないことを考えるな!とにかくプロレスを楽しめ!」という狂信的な記事を書きたくないのです。
そのためには、そもそもプロレスって何?という部分を理解しなくてはいけません。
これが
『リングサイド プロレスから見えるアメリカ文化の真実』
という本を手に取った理由です。
プロレスと歴史
この
『リングサイド プロレスから見えるアメリカ文化の真実』
一冊を読んだだけで、「プロレスはこうだ」とマウントを取れるわけではありません。
しかし、史実的な流れを掴む分では申し分のない内容です。
人類最古のスポーツといわれるレスリング、神話、競技からスペクタクルへの変化、衰退、キャッチレスリング、ルールの整備、宗教との関係性、ショービジネスへの移行とWWEのビンス・マクマホン…。
普段漠然と捉えてたアマレスとプロレスの境目、それが史実とともに線引きされて行くようでもあり、読み進めてみるとかなり面白い。
そしてまた副題「アメリカ文化の真実」という表現にもある通り、この本には書かれていなくとも内容自体がカウンターとなり「日本のプロレスとの大きな違い」も見えて来る。
WWEがソープ・オペラと言われ、新日本プロレスがストロングスタイル言われる理由。
単に「ショー寄りかスポーツ寄りか」だけではなく、根っこの部分から考えることが出来ました。
現実か非現実か
言わずもがな、世界ナンバーワンの「収入」を誇る団体はアメリカのWWE(World Wrestling Entertainment)です。
識者による個々の試合自体の評価は低いものの、エンターテイメントの最高峰としてプロレス界では圧倒的な人気を博しています。
選手を「スーパースター」と呼び、サードパーティーへの厳格な線引きを行うことでブランドのイメージを守るWWE。
迷いなく徹底的に非現実的空間へファンを誘うことで、唯一無二の存在感を誇示しています。
では、日本のプロレスはどうか。
日本のプロレスの魅力の一つは、現実と非現実が交じり合っている部分ではないでしょうか。
どこからが現実で、どこからが非現実なのか分からない。
生の感情、痛みのあるぶつかり合い、遺恨…それらがファンの感情移入へとつながっていく。
しかしながら、SNSの発展とともに、その「現実と非現実」の部分でちょっとした問題が出ているのも事実です。
ハイコンテクストからローコンテクストへ
プロレスとはハイコンテクストなジャンルです。
言わば、「プロレスとはこういうものだ」という共通認識で成り立っているジャンル。
しかしながら、そういったジャンルの特性に慣れていないファンから、レスラーが誹謗中傷を受けてしまうことも散見されます。
上記の記事にある通り、ハイコンテクストな存在であるレスラーが、誹謗中傷をしてくるファンにローコンテクスト的な立ち位置でリプライするケースも出てきています。※簡単に言うとヒーローショーで着ぐるみを着た悪役に向かって「お前なんてクズだ、一生出て来るな!●ね!」という子供に対し、着ぐるみの隙間から中の人が「お前それマジで言ってんの?」と言い返して来るような※
プロレスというジャンルのみならず、日本のエンターテイメントには「現実と非現実が交じり合っている」という見せ方がありますが、「非現実」を「現実」とファンが勘違いしてしまい、演者側があらぬ誹謗中傷を受けてしまうことは問題なのかも知れません。
まとめ
この記事自体がプロレスというジャンルについて説明的なものになってしまい、プロレスファンの方からすると「しらけてしまう内容」になってしまったのかも知れません。
しかしながら、史実やプロレスの性質などを知ることによって、よりプロレスというジャンルを真剣に楽しむことが出来るのではないか、という持論もあります。
『リングサイド プロレスから見えるアメリカ文化の真実』
この本は著者のスコット・M・ビークマン氏の「プロレスを馬鹿にするな」という怒りのような序文から始まるので、読み始めは「大丈夫かなこの本?」とやや懐疑的に感じてしまったことは事実です。
ですが、内容は様々な文献を駆使した硬派な内容となっています。
プロレスファンの方、それ以外でもご興味のある方は「先ずはお近くの図書館にあれば借りて読んで見る」のも良いかも知れません。
よっぽど興味が湧いたのならば、ご自身の本棚にこの一冊を足してみても良いでしょう。
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