胸を締め付けるほどの心理戦
壮大な映画の「中編」を見たような気持ち
戦前のやりとり、試合、試合後。
昨日の高橋ヒロムvsエル・デスペラードの試合はまるで一本の映画でもみるような、そんな試合でした。
しかもその映画は一話完結ものではなく、既に何かが始まっていて、これからも何かが続く「中編」のような印象です。
もしかすると、高橋ヒロム選手のファンにとってはいろんな意味で「重い」試合になったのかもしれません。
ヒロム選手のファンでなくとも、二人のこれまでを知るファンの心にはズシンとくるものがあったはず。
リーグ戦の一試合でここまで胸をしめつけるような感情を生み出す理由はなんだったのでしょうか?
替わる主導権
僕の個人的な見方ですが、これまでのお互いの「好き嫌い」の主導権はヒロム選手にあったと思う。
相手(デスペ)から好かれているが、それにこたえるもこたえないも自分(ヒロム)次第、いわば恋愛において主導権を握るような立場です。
しかし、昨日の試合でその主導権は逆になってしまったように感じました。
オマエ、オレのこと『べつに』って言ってたじゃん。大嫌いだって昔。俺は大好きだって言ってんのにさあ。それが終わったと思ったら『べつに』かあ? どうだ? 『べつに』っていうのはよ、好きでも嫌いでも興味がねえってことなんだよ。これで、また俺に興味持ってくれた?
(エル・デスペラード 新日本プロレス公式)
俺は強かったんじゃない
お前が弱かったから「相対的に」強かっただけ
(エル・デスペラード twitter)
『べつに』という言葉のニュアンスを繊細に感じとるデスペラード選手。それは文字通りヒロム選手を「大好き」ゆえの繊細さです。
そして「俺は強かったんじゃない、お前が弱かった」という言葉には、二年前の
いつもいつも自分たちのハッピーエンドになると思うなよ。これが現実だ。俺のほうが、ヒロムより…強かった
(エル・デスペラード 2018年BOSJ試合後 新日本プロレス公式)
との温度差が感じ取れますよね。
二年前は俺の方が強かったけど、今はお前が弱いだけ。
戦前、デスペラード選手に対しかなり余裕の態度を見せていたヒロム選手。
それはまだデスペラード選手が自分の手のひらの上にいる存在と思っていたからではないか。
しかし、現実は大きく違ったようです。
昨日の一戦を機に、今度はヒロム選手がデスペラード選手を「追いかける」形になってしまうのかも知れません。
光と影
公式戦の試合順、8試合中7試合がメインイベントだぜ? あいつ(ヒロム)、チャンピオンじゃねぇんだぞ? 石森がしゃべんねぇから、そういうことになってんのか? それも試合終わってわかるだろう。誰がジュニアの顔だってのかを。『俺だ!』って言いたいよ。でも、それがいつまでも続くと思ったら大間違い。俺は別に新日本ジュニアの顔になろうなんてこれっぽちも思ってねぇが、あいつが光れば光るほど、輝けば輝くほど、あいつの光が強くなれば強くなるほど、その影でゴチャゴチャやっている俺たちの影も強くなる。
(エル・デスペラード 新日本プロレス公式)
チャンピオンである石森選手よりもヒロム選手の方がメインイベントが多いという現実。
そして、「あいつの光が強くなれば強くなるほど、その影でゴチャゴチャやっている俺たちの影も強くなる」という言葉。
勿論光と影は表裏一体という見方もでき、「相乗効果」というポジティブな見方もできますが、そこまで穏やかなものではないと思います。
デスペラード選手はヒロム選手にではなく、新日本プロレスに対してメッセージを送ったのではないでしょうか。
「影の強さ」という言葉が果たして「明暗だけの意味」で使われたものなのか、気になるところです。
物語は続く
繰り返しになりますが、高橋ヒロムとエル・デスペラードの戦いは壮大な映画の「中編」を思わせます。
ほとんどの選手同士が一話完結の試合で終わってしまう中、長い時を経て物語が続いていくということは、この二人に切っても切り離せない何かがあるからに違いありません。
それはまるでケニーと飯伏、内藤とオカダ、棚橋と中邑のような、そんな関係性。
ベストオブザスーパージュニアはまだ二日目です。
高橋ヒロムとエル・デスペラード、この二人のインパクトを超える試合が生まれるのかどうか?
ワールドタッグリーグを戦うヘビー級選手たちにもいい刺激になったのではないでしょうか。
≪END≫
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