プロレス時評

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【G1CLIMAX30】棚橋弘至の世界【不屈の男】

不屈の男・棚橋弘至

棚橋弘至の世界

 

昨日10月1日に開催された『レック Presents G1 CLIMAX 30』アオーレ長岡大会。

メインイベントではSANADA選手が内藤選手を破る快挙を見せ、新日本プロレスに新しい光が差し込んだ日でもありました。

僕の個人的な感想ではありますが、ここ数ヶ月でEVIL、SANADAという次世代のトップレスラー二人の前に立った内藤選手にも拍手を送りたい。

自らの王者としての価値を証明しながら、団体の未来も視野にいれるその姿は、オカダ選手や棚橋選手に通ずるスケール感を感じました。

特に最後のSANADA選手とのグータッチの場面。

王者の意地としてスルーすることもできたはずですが、あえてグータッチを選んだ内藤選手。

自分を倒したSANADA選手へのリスペクトとともに、潔さもありました。

内藤選手にとって痛い一敗であることに間違いありません。

しかし、SANADA選手の成長に納得する部分もあったのではないでしょうか?

試合の途中わちゃわちゃした場面もありましたが、トータルでは素晴らしい試合でした。

他にも素晴らしい試合がいくつもあったアオーレ長岡大会。

なかでもピックアップしたいのが『棚橋弘至vsYOSHI-HASHI』です。

 

YOSHI-HASHI

まず、YOSHI-HASHI選手に触れてみたい。

NEVER6メンタッグ王者を獲ってから、いや獲るちょっと前からもレスラーとして変貌しつつあったYOSHI-HASHI選手。

格が、役割が人を変えるのか、現在のYOSHI-HASHI選手には「強さ」と「厳しさ」がある。

この試合の中で印象的だったのは、YOSHI-HASHI選手の厳しい攻めと棚橋選手へのまなざしです。

普段はYOSHI-HASHI選手がグロッキー状態になっている方が多かったのに、今回は真逆でした。

苦しい状況になった棚橋選手、それを見下ろすようなYOSHI-HASHI選手…

リング上で説教されていた頃とは全く別人のよう。

エースの敗戦も現実かと思われたこの試合でしたが、やはり棚橋選手はすごかった。

その不屈の精神はまさに「あの人」のよう

【不屈の男】棚橋弘至の世界

 

以前、自動車メーカーの企画『極上空間』で真壁選手とドライブ雑談をした棚橋選手。

そこで棚橋選手は新日本プロレスのベストバウトに

『アントニオ猪木vsビックバン・ベイダー』

をあげていました。※真壁選手も同じ試合をあげてました※

僕はリアタイでこの試合をみたことがないのですが、新日本プロレスワールドで視聴可能です。

96WRESTLING WORLD IN闘強導夢 1996年1月4日 東京ドーム 第7試合 日刊スポーツ新聞社創立50周年記念特別試合 INOKI FINAL COUNT DOWN 5th アントニオ猪木 VS ビッグバン・ベイダー

この試合の何が魅力かを簡単にいうと、猪木選手の不屈の精神です。

ベイダー選手にボコボコにされる猪木選手。

「あれ?死んだ?」

とこちら側が錯覚してしまうほど、グロッキー状態の猪木選手。

すでに全盛期は過ぎた状態の猪木選手にとって、こうなるであろうことは誰しも予測できたはず。

それでも猪木選手は驚異的な粘りを見せ、勝利する。

棚橋選手は、「レスラーとして晩年」をむかえた猪木選手に胸を打たれたと語っていました。

ここで安易に猪木選手と棚橋選手が同じだ、などということは言いません。

そしてまた、棚橋選手はまだ「レスラーとして晩年」をむかえたわけでもない。

僕が言いたいのは、この二人に共通する「諦めないという精神」のことです。

 

棚橋弘至の世界

高橋ヒロムにヒロムちゃんワールドがあるのならば、棚橋弘至にはヒロシちゃんワールドがある。

「コンディションがー」

「技のキレがー」

と戦前にファンから批判が飛んでも、試合でひっくり返す男・棚橋弘至。

下記の引用はジェリコさんの言葉です。時間のない方は赤色の字の部分だけ読んで欲しい。

これが俺にとって3年連続3回目の東京ドーム。最初はケニー・オメガだった。そしてナイトー、そして今日はタナハシとの試合だった。どの試合も最高の試合だったと思っているが、多分自分で一つあげるとするなら、今日の試合が一番好きな試合だったんじゃないかなと思う。そしてタナハシ。彼こそがこの会社のエースということも肌で感じることができた。

(中略)

新日本に戻ってくるにあたって、オカダ、ケニー・オメガ、ナイトーの話はたくさん聞いていたけれども、ついにタナハシと対戦できた気分だった。これはWWEでアンダーテイカーとやった時と同じような気分だった。WWEでも、10年経ってようやく実現した試合だった。その時にもこれまでの長い間、『お前はどこにいたんだよ』っていう気分で、リングの中で凄くいい気分になったのを憶えている。そのような心理戦が思い出されるぐらい、素晴らしい試合だったと思う。もちろん先に述べた選手たちと比べると、機動力や可動域に関してもタナハシは劣っているかもしれないが、彼が持つファンとのつながりがリングの中でも感じられて、それが凄くうれしかった。彼が素晴らしいショーマンであることも肌で感じることができた。(クリス・ジェリコ 新日本プロレス公式)

このブログでも何度も引用しているジェリコさんのこの言葉。

彼が持つファンとのつながりがリングの中でも感じられて、それが凄くうれしかった。

棚橋選手の魅力はこの心理戦でもある。

ファンが自分をどう思い、どうして欲しいかを考え、それを対戦相手を通して表現する。

AJスタイルズも「タナハシは試合中でも観客が見えている」と言ったように、そのサイコロジーは群を抜いているものがあります。

ゆえにファンが

「コンディションがー」

「技のキレがー」

と戦前に言っても、いざゴングがなれば試合の中に引き込まれていく。

昨日の試合に限らず、これからも棚橋選手には多くのライオンたちの厳しい攻撃が襲い掛かってくるでしょう。

その攻撃が厳しければ厳しいほど

「こっから」

を感じさせてくれる棚橋選手のプロレスがそこにある。

プロレスの見方、楽しみ方、好きなスタイル人それぞれです。

しかし、この棚橋弘至の不屈のプロレスもまたプロレスのというジャンルの素晴らしさを体現する一つです。

「独自の世界観」でプロレスをし続ける棚橋選手のG1をとことん楽しみたいですね。

≪END≫

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